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神経難病

神経難病とは

難病とは、「1.原因がわからず、治療方針も確定したものがなく、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない病気で、2.経過は長年にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい病気」と定義されます。

神経難病と言われる、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などは、かつて「解らない」「治らない」の象徴でしたが、今や次世代遺伝子シーケンシングやiPSによる疾患モデル、原因タンパク質の構造解析など最先端の科学技術によって、「解らない」は「大枠は解った」になり、いわゆる疾患の「鍵分子」が次々と判明してきました。

では「治らない」はどうでしょう。アルツハイマー病患者脳にたまった老人班が抗体投与で本当に激減する日が来ようとは夢にも思いませんでしたし、何度も再発してステロイドがどんどん増え、糖尿病、骨粗鬆症、感染症などの合併症に冷や冷やしていた多発性硬化症や重症筋無力症が、生物製剤の使用で、再発が劇的に減り、ステロイドも減らせる今は我々にとって隔世の感があります。片頭痛もCGRP関連抗体製剤で発作回数が激減し、多くの若者の苦しみを取り去りました。進行期のパーキンソン病はドパミン受容体刺激を適度に間断なく行うために、内服回数を増やして、アゴニストや分解阻害薬を加えてもオフや運動合併症に難渋したものですが、機械や手術を使うと1日中安定した生活を再獲得した患者の笑顔を見ることが増えました。そして、何といっても難病中の難病であるALSの進行を止めうる、それどころか症状を改善しうる薬が登場したのです。家族性ALSの原因遺伝子として我が国で最も多いSOD1遺伝子の突然変異で生じるALSは、遺伝子変異に基づく異常タンパク質が原因分子です。トフェルセンというアンチセンス核酸はSOD1遺伝子由来のメッセンジャーRNAに結合して転写を阻害する新薬がそれです。米国では2023年5月に承認され、わが国でも2024年12月に承認されました。その他、脊髄性筋萎縮症や家族性アミロイドポリニューロパチーなど、着実に治療効果を実感できる薬が増えています。

これまで原因不明だった病気の仕組みが明らかにされ、それに応じて新しい治療法が日々開発されています。近年の医学の進歩は、神経難病の医療を大きく変えつつあります。

主な神経難病

多発性硬化症(MS)

思春期から中年期まで、様々な年齢で発症します。目が見えにくくなったり、手足がしびれたり、などのいろいろな症状が、良くなったり悪くなったりを長年にわたって繰り返します。ほとんど無症状に回復することもあれば、そのまま車椅子生活を余儀なくされる場合もあり、経過はさまざまです。
診断:MRIで病変を確認し、髄液検査などで診断します。
治療:急性期の治療だけではなく、再発予防のための治療が重要です。病気の活動性や、それぞれの社会的背景もふまえた上で、どのような治療がよいか専門医とご相談ください。

重症筋無力症(MG)

以前は若い女性に多く見られたのですが、最近は高齢になって発症する人が増えました。瞼が下がったり、物が二重に見えたりする症状から始まり、手足の力が入らなくなることもあります。朝方は比較的よく、夕方になると症状が悪くなるという特徴があります。
診断:血液検査と筋電図検査で診断します。肺の検査で胸腺腫が見つかることもあります。
治療:急性期から慢性期までたくさんの治療法があります。専門医と十分に話し合って、長期的な治療計画をたてましょう。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)

比較的最近発見された末梢神経の病気です。手足がしびれたり、力が入らなくなったりする症状が慢性に進行します。また、良くなったり悪くなったりを繰り返すこともあります。
診断:神経伝導検査と髄液検査で診断します。
治療:点滴治療が基本ですが、再発を繰り返すときは、内服薬を含めて、いろいろな治療法を選択することができます。

脊髄小脳変性症(SCD)

中年以降に発症することが多く、徐々にふらつきが出てきて、歩行が不安定になります。最初は「歳のせいかな」と思いますが、だんだん進行して、転びやすくなったり、言葉がしゃべりにくくなったりします。
診断:頭部MRIで小脳の萎縮がみられます。隠れた病気が原因になっていることもありますので、全身をよく調べる必要があります。
治療:病気を治すことはできませんが、点滴やお薬で症状が軽くなります。運動療法も病気の進行を防ぐのに役立ちます。

多系統萎縮症(MSA)

中高年で発症し、バランスが悪くなり、転倒しやすくなります。言葉もしゃべりにくくなり、立ちくらみや便秘、尿を出しにくいといった症状もあらわれます。
診断:頭部MRIで特徴的な異常がみられます。
治療:根本的な治療薬はありませんが、それぞれの症状に合わせて、さまざまなお薬があります。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

主に中高年で発症し、比較的急速に手足の筋肉がやせてきて、力が入らなくなる病気です。進行すると食事もとれなくなり、さらには呼吸も困難になります。
診断:筋電図検査が必要です。良く似た別の病気がたくさんありますので、他の病気を除外することが重要です。
治療:お薬で症状の進行を少しだけ遅らせることができます。食事がとれなくなったら胃瘻を造ったり、呼吸が苦しくなったら人工呼吸器をつけたりすることで寿命を伸ばすことはできますが、病気の進行を止めることはできません。

筋ジストロフィー

子供にみられるのはデュシャンヌ型ですが、思春期に発症する顔面肩甲上腕型や、成人になってから発症する筋強直性ジストロフィーなど、さまざまな種類があります。
診断:筋電図検査をし、筋肉の一部をとって、顕微鏡で調べます。最近では、多くのタイプが遺伝子検査により診断可能となりました。
治療:病気の研究が進んでおり、近い将来に治療が可能となることが期待されているタイプもあります。

神経難病の多くは国指定の特定疾患です

神経難病の多くは国が指定する難病対策事業の対象になっています。指定を受けることで医療費が軽減されることもありますので、ご遠慮なく相談してください。

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